スキル・語学2026-07-27監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

半導体業界に英語力は必須か — 九州拠点で本当に使う英語のレベル差

この記事の要点

「英語ができないんですけど、半導体業界に転職しても大丈夫でしょうか」——九州で面談をしていると、この質問は本当によく出てきます。

結論から言うと、英語力が問われるかどうかは職種によって大きく差があると僕は考えています。量産オペレーター職なら英語不問のケースが多い一方、プロセスエンジニアや管理職になるほど求められる英語力は段階的に上がっていく。この構造をまず理解しておくことが、余計な不安を減らす第一歩だと感じています。

0. 結論よりも先に:九州の半導体現場で「英語ができない」と詰むのか

英語ができないから半導体は無理だと思われている方に、まず全体像をお伝えしたいと考えています。僕の体感で言うと、九州エリアの半導体求人のうち英語必須と明記されているものは決して多数派ではありません。TSMC熊本(JASM)関連の求人でも、量産ラインのオペレーター職の多くは日本語ベースで完結する設計になっており、英語力は加点要素という位置づけに留まっているケースが体感として多いです。一方で、プロセスエンジニアや装置エンジニア、購買・品質保証など台湾本社や海外装置メーカーと直接やり取りする職種になると、話は変わってきます。実際に九州の求人票を横断的に見ていくと、「英語不問」「マニュアルは日本語」と明記される案件と、「TOEIC600点程度」「日常会話レベルの英語力歓迎」と書かれる案件がはっきり分かれている印象があります。ここでは職種別・スコア別・現場での使用実態に分けて、僕が転職支援の現場で見聞きしてきたことを整理していきたいと思います。

1. 職種別に見る英語力の実像 — オペレーター・技術者・管理職の違い

まずオペレーター職についてですが、九州の量産ラインで働く方の日々の業務は、基本的に日本語のSOP(標準作業手順書)と日本語の朝礼・引き継ぎで完結する設計になっていると僕は理解しています。装置のタッチパネル表示が英語のままになっている工程も一部にはありますが、これはボタンの位置と意味を覚えてしまえば業務上大きな壁にはならないというのが、現場で聞く声の体感値です。

次にプロセスエンジニアや装置エンジニアの層になると、状況は変わります。海外装置メーカーが発行するマニュアルやデータシートは英語のまま配布されることが多く、装置トラブル時に本国のサポートセンターへ英語でメールや電話をするケースもあると聞きます。加えてTSMC熊本のように台湾本社とのつながりが強い拠点では、プロセスレシピの議論や品質改善会議が英語(あるいは英語混じりの日本語)で行われる場面もあるようです。ここでの英語力は「流暢に話せる」ことより「専門用語を含む文章を読み解ける」ことの方が優先される、というのが僕の見立てです。

さらに購買・品質保証・生産管理といった管理職層になると、海外サプライヤーとの契約書レビューや価格交渉、監査対応など、ビジネスレベルの英語力が求められる場面が増えていきます。ここまで来ると英語力そのものがキャリアの差別化要素になり得ると感じています。

2. TOEICスコアはどこまで見られているのか — 求人票と面接の実態

では実際に、求人票や面接でTOEICスコアがどこまで見られているのか。僕がこれまで見てきた九州エリアの半導体関連求人を大まかに整理すると、次のような傾向があります。あくまで体感値としての目安であり、企業や時期によって差がある点はご留意ください。

職種TOEICスコアの目安実務での英語接触頻度
量産オペレーター指定なし(不問が中心)低い(装置の英語表示を読む程度)
プロセス・装置エンジニア600点前後が一つの目安中程度(マニュアル・会議資料を読む場面あり)
購買・品質保証・管理職700点以上を求める求人も高い(交渉・契約書レビューを含む)

ここで強調しておきたいのは、TOEICの点数そのものよりも「専門文書を読めるか」「簡単な英語メールを書けるか」という実務レベルの確認が面接で優先される傾向にあるということです。点数は入口の目安として使われるものの、それだけで合否が決まるわけではないというのが、僕の体感です。

3. 現場で本当に使う英語 — エピソードとケース比較

ここで、僕が実際に耳にしたエピソードを一つ紹介したいと考えています。ある装置エンジニアの方は、赴任して数か月の間、装置のエラーコード一覧表と首っ引きで、英語のエラーメッセージを一つずつ日本語に置き換えたメモを作っていたそうです。最初は時間がかかっても、繰り返すうちに頻出パターンが見えてきて、半年も経つ頃にはメモを見なくても対応できるようになったと話していました。これは特別な英語力があったからではなく、業務の中で使う英語の範囲がそもそも限定的だったからこそ実現できたことだと僕は理解しています。

一方で、台湾本社とのTeams会議に参加する立場になると、話は少し変わってきます。会議自体は通訳が入ることも多いようですが、チャットでのやり取りや資料の事前共有は英語のままというケースもあり、「読めればなんとかなるが、瞬時に話すのは難しい」という声を聞くことがあります。この「読む力」と「話す力」の非対称性は、半導体業界に限らず海外拠点と連携する製造業全般に共通する特徴だと感じています。

比較のためにもう一つ、TOEIC500点台からスタートしたケースと、600点台からスタートしたケースを並べてみます。前者は入社当初、英語のマニュアルを読むのに人の2倍近く時間がかかっていたと本人が話していましたが、同じ装置を半年扱ううちに読むべき箇所のパターンが絞られ、業務上の支障はほぼなくなったそうです。後者はマニュアルの読解自体には苦労しなかったものの、台湾側とのメールで「専門用語は分かるが、依頼のニュアンスをどう和らげて書けばいいか分からない」という別の壁にぶつかったと聞いています。つまりスコアの高低だけでは、現場で困る場面を正確には予測できないというのが僕の実感です。

4. 英語が苦手な人がやるべき学び直しルート — 九州で使える手段とよくある失敗

では英語に自信がない方は、どこから手をつければよいのでしょうか。僕がおすすめしているのは、いきなり英会話に取り組むのではなく、まず「自分の職種で実際に読む英文のパターン」を知ることです。目安として、応募先企業が使っていそうな海外大手の半導体製造装置メーカーの公開マニュアルやカタログのPDFを1本、週末に1時間ほどかけて読んでみる。分からない専門用語を10個ほど拾い出して意味を調べるだけでも、実際の業務で使う語彙の傾向はかなり掴めると感じています。購買志望であれば、英文契約書のひな形を同じように週1時間、数週間かけて読み込んでみるのも有効です。

ここでよくある失敗が、いきなりTOEICの参考書を1冊丸ごとやろうとして途中で挫折してしまうパターンです。半導体の実務で使う英語は範囲が限定的なので、汎用的な英語学習から入るより、自分の職種に近い実務文書から逆算して覚えていく方が、僕の体感では続けやすいと思います。もう一つの失敗は、英語力への不安が先に立ちすぎて応募自体を見送ってしまうケースです。前述の通り、オペレーター職であれば英語不問の求人も多いので、まずは工程理解を優先して応募し、必要になった段階で学び直すという順序の方が、結果的に前に進みやすいと感じています。

九州エリアには、自治体が半導体人材育成の一環で開設している職業訓練や講座も出てきており、こうした場で技術英語に触れる機会を得られることもあります。加えて、オンライン英会話サービスを使って「工場見学のガイド」「装置トラブルの説明」といった業務に近いシチュエーションのレッスンを選ぶことで、実務に直結する形で英語力を底上げしていく方法も現実的だと考えています。企業側の英語研修制度が充実しているケースもあり、入社後にTOEICの点数アップを支援する企業もあると聞いています。英語は入社の条件というより、入社後に伸ばしていくスキルという位置づけで捉える方が、精神的にも無理がないと僕は感じています。

5. 通訳・ブリッジ人材というキャリアの選択肢

もう一つ、英語力を武器にしたキャリアの選択肢として、通訳・ブリッジ人材というポジションも九州の半導体クラスターでは注目されています。台湾本社と日本側の現場をつなぐ役割で、技術的な内容を正確に翻訳できる人材へのニーズは高まっていると感じています。

こうしたポジションは、語学力に加えて半導体プロセスの基礎知識も求められるため、未経験からいきなり就くのは難しい面もありますが、現場経験を積みながら通訳寄りの業務にシフトしていくキャリアパスも実際に存在すると聞いています。英語力と現場理解の両方を持つ人材は、九州の拠点拡大が続く限り一定の需要が見込めるポジションだと僕は考えています。

厚生労働省が公表している「外国人雇用状況」の届出データを見ると、熊本県内の外国人労働者数はここ数年で増加傾向にあります。半導体クラスターの拡大に伴い、現場の多言語化は今後も進んでいくと見ておくのが自然だと思います。

(結論)

皆さんいかがでしたでしょうか。英語力が半導体業界への転職を阻む絶対的な壁ではないということを、僕の体感を交えてお伝えしてきました。量産オペレーター職であれば英語不問のケースが多く、プロセスエンジニアや管理職になるにつれて求められる英語力が段階的に上がっていく、という構造をまずは理解していただければと思います。英語が苦手な方は、まず工程理解を優先し、必要になった段階で自分の職種に合った英語を学び直すという順序でも決して遅くはないと僕は考えています。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 半導体業界に転職するのに英語は必須ですか?

結論から言うと、必須かどうかは職種次第です。九州拠点の量産オペレーター求人の多くは英語不問と明記されており、実務でも日本語のSOPと日本語の朝礼で完結するケースが体感で多いと感じています。一方でプロセスエンジニアや購買・品質保証など台湾本社とやり取りする職種では、TOEIC600点前後を一つの目安として求められる場合があります。

Q. TOEICは何点あれば半導体業界の技術職に応募できますか?

求人票に明記されるケースはまだ少なく、僕の体感では600点前後を一つの入口の目安として見ている企業が多い印象です。ただし面接では点数そのものより、英語のマニュアルを読めるか、簡単なメールのやり取りができるかという実務レベルの確認が中心になることが多いです。

Q. 英語が苦手でも半導体業界でキャリアアップできますか?

英語が苦手なままオペレーターから経験を積み、後から工程知識を武器に技術職へステップアップしている方は九州の現場にも一定数いると感じています。英語は後からでも積み上げられるスキルなので、まずは工程理解を優先し、必要になった時点で学び直すという順序でも遅くはないと僕は考えています。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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